世論調査室の役割を教えていただけますか?
定例的な世論調査を行っています。具体的には内閣支持率が上がったか、下がったか、政治的な関心について有権者らに調査をし、政治部に結果をあげています。調査は、電話か郵送調査のいずれかで、郵送調査の結果については、世論調査室で取りまとめて新聞の記事にすることもあります。調査はマネジメントも含み、質問表の作成、調査対象者の抽出、回答エラーのクリーニング、集計など多岐に渡ります。
貴社からご要望のあった Twitter の傾聴システムについては、どのようなシーンでの活用を期待されていたのでしょうか。
私はデジタル報道センター部門も兼任しているのですが、きっかけは公職選挙法が改正され、インターネットなどを利用した選挙運動が解禁されたことです。月に一度の世論調査ではカバーできない部分があるので、 Twitter をうまく活用することで、リアルな調査で埋めることのできないトレンドや傾向を掴みたいと思ったのです。
具体的にどのような使い方をされているのか教えてください。
基本的にはキーワード検索をしているのですが、アクティブユーザーをランダムに1万人抽出して、日々CSVファイルでデータを取得しています。アクティブユーザーは、毎日100人ずつ入れ替わるように設定しています。

キーワードはどのように決めるのでしょうか?
新聞記者と事前に相談して決定したり、こちらから提案することもあります。収集したデータはバッチ処理、抽出、グラフ化するなどして、記者に渡します。過去のデータはすべてとってありますね。これは非常にメリットがあって、他社の同様のシステムの場合、数週間前のものまでしか遡れなかったりします。他紙でも同様のツールを使ったりはしているようですが、キーワード検索型の場合、1キーワードに対していくらという料金設定をしているところがほとんどで、選挙が終わったら契約を終了する、という具合のようです。そうするとデータが取得できない期間ができてしまう。通年でデータが取得できるというのは他紙との違いを大きく出せるところですね。何か起こったら、すぐにネットに反映される時代。ゴーガさんの Twitter 傾聴システムは、ある意味、観測システムになりうると思っています。
毎日データを取得しているとのことで、データ量もそれなりだと思いますが、システムの安定度はいかがでしょうか。
大きなトラブルはありません。データの途切れもなく、安定していると言えます。特に何もないというのは最高品質です。一部他社にお願いしているものもあったのですが、データの欠損が見つかったりしました。ゴーガさんは他社に比べて技術力が違うなという印象を持っています。
最近、 Twitter 傾聴システムで取得したデータが役に立った新聞記事はありますか?
はい。政治に関する感情(頼もしい、イライラする、悲しい、ほっとするなど)を調査したことがありました。無関心、無感情層が多いと予測していたのですが、当時の政治を支持する人の中に、イライライする感情を持った人が多かったのです。これは月に一度の世論調査でわかったことです。なぜかと原因を探るも、世論調査では質問事項の数も限られているので、限度がありました。ところが、 Twitter では感情のサンプルを取ることができます。個人の動機を深堀りするんです。そうすると、感情がどういう背景から出てきたのか、という生の声が拾えます。
単純にあるキーワードに対して「どれだけつぶやかれました」、「前日比2倍です」と言うのは簡単ですが、実際には同じ人が何度もツイートしていて、人数で見ると大して多くはなかったりもします。一定量フィルターをかけたところで、最終的には人が判断して生のツイートを読み、その後、記事化することで、面白みが増すんです。記事の進化については、多方面で興味を持っていただいているようですので、今後も世論の評価をさまざまな角度から分析して質の高い記事につなげたいと思います。